PRIO KNOWLEDGE

株価予想は当たる?予測の限界と「精度」の正しい見方

株価予想が『当たる』かを評価するには、何を予想し、どの期間で、どの基準と比べたかをそろえる必要があります。方向の的中率と価格の誤差を分け、予測精度を正しく評価する基本を整理します。

株価の予測値と実際の結果のずれを比較するチャート

株価予想にはチャート、経済指標、専門家、機械学習モデル、群集予測などさまざまな方法があります。しかし「株価は予測できる」「完全に予測不能」と単純な二択にするより、何をどの条件で予測するのかを明確にした方が実用的です。

「当たる」には複数の意味がある

株価予想の精度は一つではありません。

  • 方向予想:前の終値と比べて上がるか下がるか。
  • 価格予想:1週間後や1か月後の終値を具体的な数字で予想する。
  • 値幅予想:方向だけでなく、どの程度動くかまで予想する。

上昇方向を当てても、100円上昇と予想したのに実際は2,000円上昇したなら、方向は合っていますが価格予想の誤差は大きくなります。

方向予想はbaselineと比較する

方向予想では「100回中65回当たった=65%」のように的中率を計算できます。ただし、その数字だけで優れた予測とは判断できません。

まず、その期間のbase rate(基礎的な出現割合)を確認します。base rateは、検証期間に実際に上昇・下落がどれくらいあったかという割合です。例えば、ある検証期間で10回中7回が上昇だったなら、上昇のbase rateは70%です。

次に、予測方法をbaseline(比較用の単純予測)と比較します。baselineは、複雑な予測方法と比較するための単純なルールです。例えば、毎回「上昇」と予想するルールはbaselineの一つです。上記の例で毎回「上昇」と答えるbaselineは70%になり、予測方法Aが70%だったとしても、それだけでAが優秀とは言えません。

baselineは、予測方法を使わない単純な比較対象です。毎回上昇、毎回下落、直近の方向をそのまま延長する方法など、対象期間と予想ルールに合わせて決めます。重要なのは、的中率そのものだけでなく、同じ期間・同じ条件の単純な予測と比べてどうだったかを見ることです。

class imbalanceにも注意する

上昇と下落の回数が大きく偏る状態は、機械学習でいうclass imbalance(クラス不均衡)に近い考え方です。上昇が多い期間なら、上昇だけを答える方法の的中率が高く見えます。専門的なモデルを使っていなくても、方向の割合が偏っていないかを確認し、baselineを置く理由になります。

異なる予測主体の比較についてはAI・専門家・群集予測の比較方法も参考にしてください。

価格予想は絶対誤差とMAE

価格予想では「当たり / 外れ」の二択にしない方が分かりやすくなります。45,000円と予想して実際が45,100円だったケースと、48,000円だったケースでは、どちらも完全一致ではありませんが誤差は大きく違います。

1回の予想なら、絶対誤差 = |予想価格 - 実際の価格| で誤差の大きさを測れます。複数回の予想を評価する場合は、絶対誤差の平均であるMAE(平均絶対誤差)を使います。

以下の数値はすべて説明のための仮想例で、実際の市場データではありません。

予想価格実際の価格絶対誤差
45,000円45,500円500円

例えば複数回の絶対誤差が500円、1,000円、1,500円なら、MAEは(500 + 1,000 + 1,500)÷ 3 = 1,000円です。単位が円のままなので、「平均的に何円ずれたか」を読み取りやすい指標です。

方向と価格は別々に採点する

方向が合っていても価格の誤差が大きいことがあり、方向が外れていても価格が近いことがあります。「当たった / 外れた」を一つの言葉にまとめないため、前回終値からの方向と、予想価格の誤差を別々に記録します。

前回終値予想実際評価
44,000円45,000円46,500円上方向は正しい。価格の絶対誤差は1,500円。
44,000円45,000円43,900円方向も外れた。価格の絶対誤差は1,100円。

この表も説明のための仮想例です。数字の近さと方向の正しさは、別の評価結果として扱います。

単純な予想との比較

価格予想にも単純な基準を用意できます。例えば「予想時点の基準価格がそのまま続く」という、価格を据え置く予想をbaselineにできます。

その基準のMAEと、自分・群集中央値・その他の予測のMAEを比較すれば、単に「500円外れた」より意味のある評価になります。ただし、価格据え置きが唯一正しい基準とは限りません。予想期間や目的に応じて、直近の値など別の基準を置く場合もあります。

金融予測の研究でも、単純なbenchmarkとのout-of-sample比較が重要な論点とされています。

参考:Campbell & Thompson, Predicting the Equity Premium Out of Sample: Can Anything Beat the Historical Average?(NBER working paper w11468)

予想期間で難しさは変わる

翌営業日、1週間、1か月では使える情報と、その後に発生する未知の情報量が違います。短期には夜間の市場情報が使えますが、期間が長くなるほど予想後に新しい決算、経済統計、政策変更などが発生します。

金融研究でも、将来リターンの予測可能性については期間・市場・手法によって異なる結果が報告されており、「この指標なら常に予測できる」という一つの結論に単純化できません。

out-of-sample評価

過去データから大量の指標を試し、その中で最も成績が良かった方法だけを選べば、偶然よく当たっていたルールを見つける可能性があります。これを避けるため、ルールを作るときに使っていない期間で検証します。

時系列上の順番使い方役割
過去の一部その期間の情報だけでルールを作り、内容を固定する予測方法を決める
それより後の期間ルール作成には使わなかった期間へ、固定したルールを適用する未知だった条件で性能を確認する

ここでいう「後の期間」は、現在から見た未来を知って予測するという意味ではありません。データを時系列の順に並べ、後半のデータをルール作成に混ぜずに残しておく、という検証上の区切りです。後半の結果を見てからルールを調整した場合、その後半は同じ意味でのout-of-sampleではなくなります。

過去のチャートへきれいに当てはまることと、未来でも同じように予測できることは別です。

データ漏洩を簡単に確認する

データ漏洩は、予測時点では使えなかった未来の情報が、入力やルールの中へ入り込むことです。見かけの成績が良くても、実際の予想時には再現できません。

仮想例(実際の市場データではありません):その日の終値を予想するモデルなのに、終値が確定した後のデータを入力していたら、予想前には知らなかった情報を使っています。また、当時発表された初回値ではなく、後から改定された経済統計を「当時使えた値」として入れる場合も同じ問題になります。

確認するときは、予想を出した時刻、入力データが公表された時刻、後から改定された値を使っていないかをそろえます。これは機械学習に限らず、ニュースや人の予想を比べる場合にも必要な確認です。

少数回の的中率を過信しない

一度だけなら大胆な予想も当たることがあります。逆に合理的に考えた予想でも外れることがあります。予測方法を評価するなら、複数回の結果を同じ条件で蓄積します。

予想回数が少なければ偶然の影響が大きくなります。例えば、次の3つは的中率だけを見ると似ていますが、同じ強さの証拠ではありません。数字は説明のための仮想例です。

結果的中率読み方
3回中3回100%偶然の影響を強く受けやすく、これだけで方法の優位性は判断できない。
30回中21回70%3回より材料は増えるが、対象期間や市場環境を確認する必要がある。
300回中210回70%同じ70%でも、より多くの観測を含む。ただし期間中の環境変化や条件の一貫性は別に確認する。

したがって、予想回数だけでなく、対象期間と市場環境も一緒に見ます。回数が増えれば評価材料は増えますが、その間に市場環境が変わる可能性もあるためです。

市場環境別の評価

予測の成績は市場環境によって大きく違うことがあります。例えば、上昇が続いた局面、下落が続いた局面、値動きが大きかった局面、比較的落ち着いた局面で結果を分けて見ることもできます。

ただし細分化しすぎるとサンプルが減り、偶然の影響を受けやすくなる点にも注意が必要です。

予測精度を見る項目

予測タイプによって見るべき評価方法が違います。

方向予想

評価指標
的中率
比較対象
ベースレート(単純な基準)
注意点
的中率だけで判断しない

価格予想

評価指標
絶対誤差、複数回ならMAE
比較対象
単純baselineの誤差
注意点
中央値だけでなく分布も見る

これらの条件がない「的中率○%」「平均誤差○円」だけでは、予測能力を十分に評価できません。

比較の公平性については、同じ条件で比較することの重要性をAI・専門家・群集予測の比較方法で詳しく扱っています。

PRIOでの扱い

PRIOでは、翌営業日の方向予想と、約7日後・約30日後の価格予想を分けて扱います。画面には、予想期間に応じて方向の割合や集計数、価格予想の中央値・平均、実際の終値との差などが表示されます。ただし、画面に表示される項目と、この記事で説明する評価指標は同じではありません。すべての統計表示機能が実装済みという意味ではなく、比較するときの考え方を分けて整理します。

将来的に同じ条件の予想を比較するなら、PRIOのデータを次の単位で整理できます。

対象記録する値比較の軸
次回予想上 / 下、予想結果方向的中率とbaselineとの差
7日・30日価格予想値、実績値、絶対誤差複数回ならMAE
群集多数派方向、中央値、平均値、参加人数自分の予想や他の方法と同じ条件で比較

評価も、次回は方向の的中、7日後・30日後は予想価格と実際の終値との差、と分ける方が適切です。「当たったか」だけでなく、なぜその予想をしたのか、どの前提が変わったのかまで振り返ることで、予想を市場について考える材料として使えます。

予想期間別の具体的な考え方については、翌営業日の予想方法、1週間後の予想方法、1か月後の予想方法も参考にしてください。

自分なら、どう予想する?

Prioでは、自分で予想し、受付終了後に確定した集計を確認し、対象日後に実際の結果と比較できます。

Prioは市場予想を集計・比較するためのサービスです。金融商品への投資を推奨するものではありません。